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  (3/23) 2005―2006年秋冬パリ・コレクション解説 「アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)」

 全体にデコラティブ(装飾的)な仕掛けの目立つコレクションとなりました。アバンギャルドでミニマムな作風で知られたブランドですが、フェミニンな演出にも冴えを感じさせます。

 ミニスカートのドレスにクロップトパンツという組み合わせが今回のキラーアイテムといえるでしょう。胸全体にファーを配したブラックドレスはゴージャス感を強調しています。ミニ丈のスカートの裾は、まるでいい加減にクローゼットに押し込んでしまった後のような不規則なドレープが波打っています。ヘム(裾)ラインも不ぞろい。ボトムにはクロップトパンツを合わせています。

 コートジャケットは前の打ち合わせが左右でアシンメトリー(非対称)。襟の位置も左右でずれています。フロントは斜めの打ち合わせで、裾に向かって開いており、へその辺りで正面に隙間ができてインナーがのぞく仕掛けです。共生地のパンツは黒革のブーツにインしています。

 ファーはさまざまなアイテムと組み合わせて使っています。インパクトがあったのは、ジャケットの肩から斜めに袈裟懸けで重ねる使い方です。尻尾の形がはっきり分かるファーを使って、ワイルドなテイストを提案しています。

 ドレスでは腰周りに過剰なドレープをこしらえ、ももから下をすっきり見せています。親指程度の大きさの光沢ある布玉を100個以上も首から腰にかけて垂らすデコラティブなオーナメント(飾り)も見せていました。

 色はベージュ、黒がメーンです。黒とのコントラストをうまく使った構成はいつもながら見事です。革やシルクを使った作品も多く見られます。

 アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)氏は59年、ベルギーのコルトレイク(Kortrijk)で生まれました。81年にファッション界の名門校、アントワープ王立芸術学院(the Royal Academy of Fine Arts in Antwerp)を卒業。同学院からはマルタン・マルジェラ氏やドリス・ヴァン・ノッテン氏らも出ています。

 85年、夫の写真家、パトリック・ロビン(Patrick Robyn)氏と共に自分のブランドをスタートさせました。86年には同学院の卒業生たち6人でロンドンの展示会に参加し、いわゆる「アントワープ6」の一人として知られるようになりました。

 87―88年秋冬からレディースのコレクションをスタートさせました。92年からはパリ・コレクションに参加。メンズのかっちりしたテーラーリングを採り入れた前衛的な作風で知られています。過剰な装飾を排した「脱構築派(deconstructionist)」という評価が早くからあります。シンプルなパンツスーツはデビュー当初から手がけています。コレクションでも男性モデルと女性モデルが交互に登場します。

 メンズライクなカットとシルエットに切れ味があります。ミニマムなコンセプトがベースにあり、白と黒のコントラストを意識した作品が多い。黒のジャケットは定番化しています。しばしば「コム・デ・ギャルソン」の川久保玲氏や「Y’s」の山本耀司氏の影響が指摘されています。1970年代の女性ロッカー、パティ・スミス(Patti Smith)やジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)への傾倒を口にしており、ロックテイストを打ち出したハードタッチのコーディネートも得意としています。

 「シャネル」の主任デザイナー、カール・ラガーフェルド氏が敬意を込めて「クイーン・アン」と呼んだというエピソードがある程の実力者です。米国版「ヴォーグ」誌は「ニュー・アルマーニ」という異名を贈っています。

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