fashion bible ファッションバイブル

「ファッションバイブル(fashion bible)」はファッション好きのためのニュースサイトです。
ニュースは毎日、随時更新。ブランド解説、人気セレクトショップの店頭レポート、ブログも掲載しています。
女性ファッションジャーナリストでバイヤーのrieが運営しています。

newsbrandshopblogprofilelinkbbsmailhome
 
news  
 
  (3/17) 2005―2006年秋冬パリ・コレクション解説 「ロシャス(Rochas)」

 28歳のオリヴィエ・ティスケンス(Olivier Theyskens)氏が手がける「ロシャス」はドレス、ドレス、ドレス。オートクチュールの歴史が長い「ロシャス(Rochas)」の風格を感じさせるエレガンスなコレクションとなりました。

 波紋のように30センチ程の間隔を開けて、優美なひだを全身に配した、ティアードスカート風のロングドレスがキーアイテムとなっています。よほどのパーティーでなければ着る勇気がないような、裾を引きずるクラシックなデザインです。布地をたっぷり使っています。

 シルエットは細身。裾の緩やかな広がりが上半身のタイトさをさらに強調しています。

 黒のツーピース・ドレスはスタンドカラー(立ち襟)で、明らかにチャイナドレスを意識したラインです。中国柄のエンブロイダリー(刺繍)に、人民服風の筒袖、マオカラーと、中国モチーフがぎっしり。もちろん、ランウェイを歩いたのも中国系モデルでした。今シーズンは「チャイナシフト」を見せたメゾンが相次ぎましたが、「ロシャス」は最もはっきりと中国人バイヤーへの配慮を見せていました。

 生地は薄くて光沢のあるシルクが大半でした。レースのチュールをふんだんに使った、クチュール感あふれるデザインが次々と現れ、まるでプレタポルテ(高級既製服)ではなく、オートクチュール(注文服)のコレクションかと勘違いするほどです。ひじまである長い手袋で手を隠し、首から上しか肌を見せないブラック・ロングドレスは貴婦人のたたずまい。「ロシャス」の伝統的なドレスデザインへのリスペクトを感じさせるデザインが見受けられました。

 色は黒や白、シャンパンゴールド、光を反射する深い緑などを多用していました。モミジのような木の葉のモチーフを散らすデザインが繰り返し登場しました。身頃の布地をそのまま首周りに伸ばし、バラのボウ(結び目))に変身させる構成は丁寧なハンドクラフトの賜物(たまもの)です。

 ウエア以外では、ピカピカのシャンパンゴールドのシルクを使ったとおぼしき、ふくらはぎ丈のブーツが素敵でした。小物では細くて長いワイヤーのようなストラップを手で持ち、バッグ本体から垂れたストリングスを床に引きずって歩く演出はアイデアの勝利と言えるでしょう。

 「ロシャス」を1925年に創始したのはマルセル・ロシャス(Marcel Rochas)氏。ロシャス氏はサファリスーツやシープスキン・ジャケットなどの革新的な作品を生み出しています。ビスチェをモードに持ち込んだのは、ロシャス氏が最初だとも言われています。当時の顧客には女優のマレーネ・ディートリッヒ、ジョーン・クロフォードらがいました。

 55年にロシャス氏が死去した後は、妻のヘレンがデザイナーとなり、89年にはアイルランド人デザイナー、ピーター・オブライエン(Peter O'Brien)が主任デザイナーに就任します。2003年春夏パリコレでオブライエン氏は「ロシャス」としては初のプレタポルテを発表しました。

 ティスケンス氏は1977年、ベルギーのブリュッセル生まれ。ブリュッセルのデザイン学校、ラ・シャンブル(Ecole Nationale Superieure des Arts Visuels de la Cambre)に進みましたが、中退しています。

 20歳の97年、初コレクションを発表するという、驚くべき早熟ぶり。98―99年秋冬からパリで作品を発表しています。彼のスケッチが偶然、スタイリストの目に留まったのがきっかけで、98年の第70回米アカデミー賞授賞式で歌手・女優のマドンナ(Madonna)が、当時はまだほとんど無名だったティスケンス氏の服を着たことが、彼を有名にしました。

 「ジバンシィ(Givenchy)」からジョン・ガリアーノ(John Galliano)氏が離れたときは、後継デザイナーの有力候補となりました。最終的にはジュリアン・マクドナルド(Julien Macdonald)氏が継いでいます。

 シャープでダーク、ゴージャスでノーブルという不思議な革新性を備えたデザインはデビュー当時から変わりません。彼のファンには、女優のニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)、ジェニファー・アニストン(Jennifer Aniston)らがいます。

 2001年以降はいったん、活動を停止。しかし、約2年後の2003―2004年秋冬でプレタポルテ・ブランド「ロシャス」の主任デザイナーとしてモード界に華々しく帰ってきました。創業者のロシャス氏が得意としたビスチェやレース使いなどを現代によみがえらせたクリエーションは高く評価されています。自分の名を冠したシグネチャーブランドは休止しています。

 「ロシャス」のプレタポルテは、日本では「アンナ・モリナーリ」や「ナルシソ・ロドリゲス」などを取り扱うブルーベル・ジャパンが「ロシャス」の国内販売権を取得し、展開しています。

>>最新へ
 
newsbrandshopblogprofilelinkbbsmailhome
fashion bible all rights reserved.