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  (3/16) 2005―2006年秋冬ミラノ・コレクション解説 「リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)」

 「ジバンシィ(Givenchy)」が新デザイナーに起用したリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)氏は自らのシグネチャーブランドで黒一色の世界を現出させました。喪服を思わせるコンセプチュアル(哲学的)で官能的な作品を提案しています。

 大半のモデルに黒を着せました。しかも、黒ずくめ。かぶり物からトップスもボトムスも、靴まで黒。ショー開始直後のモデルに到っては、裾が床に20センチ程も垂れるほど、たっぷりと生地を使った漆黒のコートドレス。首が詰まっていて、顔と手首から先だけしか外気に触れないという仕立てで、まるで影が歩いているかのようです。

 ジャケットとロングスカートの組み合わせはどちらも真っ黒。軍服風のダブルブレストのコートに、黒の胴太のスカートの組み合わせは不思議な違和感を楽しめます。純黒のロングドレスには複雑なしわを寄せて、陰影をつけています。ボックスプリーツのようなひだを全面に施したつや消しブラックのコートドレスも披露しました。

 頭頂部には西洋の喪服に見られるような大きなかぶり物。真っ黒なドレスとの組み合わせには、そのまま葬列に並んでいてもおかしくない重苦しさが漂います。

 イスラム女性のチャドルを思わせる黒い大布を頭からすっぽりとかぶり、肩から指先までの緩やかな曲線を生んでいました。布はさらに爪先まで覆い隠し、見慣れない異形のシルエットを形作っていました。黒意外ではお得意のバター、アイボリーなどの色を使っていました。

 靴に力を入れ、膝丈のスカートを多く手がけるデザイナーが目立つ中、ティッシ氏は爪先を覆い隠す程の超ロングスカートを多用。肌の露出を極端に抑える、抑制の利いた演出で、今回のミラノ・コレクションでは際立って思索的な存在となりました。

 今回のミラノではファー(毛皮)が様々なメゾンで採り入れられていますが、ティッシ氏はレザーで大胆な取り組みを見せました。なめしていない革を無造作に肩から掛けたかのようなクリーム色のレザージャケットは、「果たして服なのか」と、戸惑いすら覚えるほど。衣服の約束事を解体する手法で知られるマルタン・マルジェラ氏や川久保玲氏に通じる精神を感じさせます。裾は不揃いにカットし、素材そのものの質感を強調しています。

 レザーブーツは膝上のスーパーロング。両脇に30個程もスタッド(鋲)を縦に打ってアクセントにしています。

 ティッシ氏のブランド「リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)」は2005年春夏ミラノ・コレクションでデビューしました。30歳のイタリア人であるティッシ氏は日本ではまだあまり知名度が高くありませんが、欧州ではかねてから「イタリアの期待の星」として注目されてきました。

 ファッションの名門校、セントラル・セント・マーティンズ(Central Saint Martins School)を1999年に卒業。同年から自分の名前を冠したブランドをスタートさせています。

 もともとティッシ氏は、イタリアのテキスタイル産地として知られる、ミラノの北40キロに位置するコモ市で、テキスタイルデザイナーとしてスタート。「ミッソーニ(Missoni)」をはじめとする有名ブランドのテキスタイルを手掛けたそうです。このテキスタイルの経験が彼のバックボーンとなっています。

 セント・マーティンズ在学中からは「アントニオ・ベラルディ」「ジャスティン・オー」などのブランドと仕事をしてきました。意外なところでは、スポーツウエア・ブランドの「プーマ(Puma)」ともコラボレートしています。

 2002年からはイタリアのレディースブランド「コカパーニ(Coccapani)」の主任デザイナーに就任。それまで「イル・マルケーゼ・コカパーニ」と称していた「コカパーニ」は、ティッシ氏がデザインを初めて担当した2003年春夏ミラノ・コレクションで大喝采を浴びます。マダム向けのイメージが強かった旧「コカパーニ」がエッジィでロマンチックなブランドに変身したからです。今では日本でも有力セレクトショップが展開し、伊勢丹の「リ・スタイル」にも並んでいる「コカパーニ」の再生を果たしたのがティッシ氏なのです。

 イタリアの革製品メーカー、ルッフォ社のレザーブランド「ルッフォ・リサーチ(Ruffo Research)」と、自分のブランド「リカルド・ティッシ」を合わせて、同時に3ブランドを手がけていたこともあります。「ルッフォ・リサーチ」はソフィア・ココサラキ(Sophia Kokosalaki)や、ヴェロニク・ブランキーノ(Veronique Branquinho)、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)といった才能ある若手を起用することで知られています。

 「ジバンシィ」は新デザイナーが決まらなかったせいで、2004―2005年秋冬にオートクチュールのショーを開催できないという状況に陥りました。ティッシ氏は2005年秋冬パリ・オートクチュール・コレクションでデビューするそうです。レディースのプレタポルテ(高級既製服)やアクセサリーも担当します。「コカパーニ」を復活させた手腕が「ジバンシィ」というビッグメゾンでも発揮されることが期待されます。

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