「ズッカ（ZUCCa）」ブランドのデザイナー、小野塚秋良（おのづか・あきら）氏がフランスの労働着メーカーとのコラボレーションで立ち上げたブランド「ズッカ　トラバイユ（ZUCCa TRAVAIL）」が10周年を迎えました。記念に同名の本『ZUCCa TRAVAIL』が出版されました。

　「トラバイユ」とは、フランス語で「労働」という意味。リクルートの転職情報誌「とらばーゆ」でおなじみです。「ズッカ　トラバイユ」はシンプルで丈夫な普段使いできるウエアを主に生産しています。

　「日常着」であることを重んじる小野塚氏らしい取り組みです。労働着をファッション化する試みは高く評価され、フランスプレタポルテ協会から表彰されています。武骨とすら言える素朴なデザイン。同書はその魅力を書籍と添付のDVD（１枚）で伝えています。オリジナルバッグ付きで定価7350円。

　小野塚氏は1950年新潟生まれ。杉野ドレスメーカー学院を卒業後の74年、三宅デザイン事務所に入りました。三宅一生氏の下でメンズブランド「オッズオン（odds on）」のデザインを任されました。三宅氏の門下からは津森千里氏、皆川魔鬼子氏ら優秀なデザイナーが輩出しています。

　レディースブランド「ズッカ」で89年からパリコレクションに参加。パリコレ初参加の翌年の90年、毎日ファッション大賞を受賞しました。95年からはメンズライン「カバン　ド　ズッカ（CABANE de ZUCCa）」をスタート。セイコーウオッチと組んで、腕時計「カバン　ド　ズッカ」シリーズも展開しています。

　小野塚氏はコックやギャルソンなど、飲食店で働く人のためのユニホーム「HAKU:I」シリーズも手がけています。ユニホームメーカー大手の白洋社が取り扱っています。

　大手企業の制服でも数多くの実績があり、旧富士銀行（現在のみずほ銀行）、東武百貨店などの制服をデザインしました。過剰な装飾を避け、機能的な日常着を好む傾向が強まる中、「ズッカ　トラバイユ」の発した問いかけはさらに意味を増していると言えそうです。