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・ファストファッションにMadonna(マドンナ)が新風[2010/03/14]

 ロックの殿堂入りを果たしているスーパースター、マドンナ(Madonna)が13歳の娘、ローデス(Lourdes Leon)さんと共同で、10代向けのファストファッション・ブランド「Material Girl(マテリアル ガール)」をスタートさせる。米国の有力百貨店チェーン「Macy's(メイシーズ)」の店舗とオンラインストアで8月に発売される。

 ブランド名はマドンナのヒット曲(1985)から取られている。タイトルは「物欲が強い、現実志向の女」といった意味だが、「material」には「物質、肉体、官能」などの意味もあり、重層的なメッセージが込められている。

 このブランドが8月に投入されるのは、新学期に向けた米国特有の商戦「back-to-school(バック・トゥ・スクール)」に照準を合わせているからだ。日本では新学期前だからと言って、ファッション市場が特別に盛り上がるわけではないが、米国の有力大学では寮生活が主体となる事情もあって、服をまとめて買い込む人が少なくない。学生向け新ブランドを立ち上げるには、絶好の機会というわけだ。

 12〜40ドル(1200〜4000円)程度と、学生でも買い求めやすい手頃な価格帯に設定した。いわゆるファストファッションの服と重なるプライスレンジだ。服以外に、靴や鞄、ジュエリーも扱う。

 ファストファッションが著名デザイナーと組むケースは珍しくない。エンターテインメントビジネスの大物がデザインに協力することもよくある。しかし、今回のケースはそれらとは少々、取り組みが異なる。

 第一に期間限定ではない点だ。従来の有名人コラボでは1〜3カ月程度で売り切るような短期集中型が多かった。しかし、「マテリアル ガール」は終了期間があらかじめ決まってはいない。

 第二に専用のビジネス主体が用意されているところ。「MG Icon(エムジー アイコン)」というベンチャー企業が設立されて、このプロジェクトを進める。社名の「MG」が意味するのは、「M」がマドンナ、「G」が彼女のマネジャー、Guy Oseary(ガイ・オゼアリー)氏のイニシャルだ。

 第三の違いは、本格的なアパレル企業が参加している点。米国のアパレル会社「Iconix Brand Group Inc.(アイコニックス ブランド グループ インク)」が提携して、この事業を展開する。同社は傘下に「Badgley Mischka(バッジェリー・ミシュカ)」や「Ed Hardy(エド・ハーディー)」「Ecko」「Zoo York」などの人気ブランドを抱えている大企業。デザイン面でもマドンナとローデスさんに加えて、同社のスタッフが協力するという。

 さらに、アパレルや小物だけではなく、ライフスタイルやビューティーカテゴリーの商品も準備されている。「マテリアル ガール」は1つのティーンズ像をトータルに提案する試みとなる。2011年には香水の発売も予定されているそうだ。「マドンナ(もしくはその娘)になりたい」という気持ちを誘う存在のマドンナだからこそ可能な戦略とも言える。

 「H&M」「ZARA」などのファストファッション企業とは違い、メイシーズは歴とした百貨店。その百貨店が自前でファストファッション・ブランドを立ち上げるというところも新しい取り組みと映る。

 しかも世界でも指折りの大物アーティストとのコラボ。百貨店が世界的にファッション売上で苦戦する中、「宿敵」と見られてきたファストファッションを自ら取り込む動きとしても注目に値する。百貨店の中では比較的庶民的なメイシーズらしいアプローチとも言える。

 マドンナは2007年、「H&M」と組んで、期間限定のライン「M by Madonna」をデザインした。しかし、今回はターゲット層に合わせて、娘を前面に押し出している。マドンナは51歳になった。

 「H&M」をはじめ、ファストファッション各社はこれまで有名デザイナーを迎えた期間限定ラインで話題づくりと集客の効果を上げてきた。だが、既に相当数のデザイナーが参加済みとなってしまった上、他社と先に組んだデザイナーと後からはコラボしにくい事情もあって、この手法は徐々に手詰まりとなりつつある。そうした状況の中、「マテリアル ガール」のアプローチはコラボ戦略の新手法と見える。これまでしばしばあった「名前を貸すだけ」の有名人コラボとは違うマドンナらしさを、具体的なデザインでどこまで印象付けられるかどうかが、ブランド立ち上がりの成功を占うことになりそうだ。


Illustration by Show
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